ふわりとした焼酎の名を持った天使がステラマッカートニーはかわいい、とつぶやいた。最初に出かけた日の切りたてのボブカットの毛先が揺れ、別れる度、混み合う改札で求められて、その白い剥き出しの背中はやがて嘆く、新しい華奢な身体をくるんだ。果実の香りに一生苦しむことになった。あなたよりずいぶんできた子だもの、と占い師は言った。ふいに口にした言葉は消えず訂正も推敲もできない。 無防備な頬に駆ける一筋に霜降りる痛みごと供託されている。 I love you I love you I love you I love you
足の裏と甲を擦り合わせて目覚めた。そのまま仕事をして勤務時間が終わった。契約書の草稿はピンク紫の夕刻の人通りにはためき、その裏の白紙に赤いボールペンで、電柱のデスクの上にアディダスのジャージが何かを書きつけていた。
あ!
職場で渡すホワイトデーのお菓子をデパートで並んで買った。一番汚いような大衆居酒屋に入った。
「話しかけていいですか」老いたサラリーマンがママに言った。
「最近見たミュージカルで面白いのある?ぼく見たのはね」
満たされて店を出て生活品のリストを潰していった。買い替える無印のスリッパ、イヤホンのゴム (忌々しい!)、スマイルライフ十八穀ごはん、卵、納豆、トマトジュース、乾燥わかめ、すり胡麻、オリーブオイル、水、トイレットペーパー、自分で選んだものに加えて、よほど効くという評判の肝臓系のサプリを勧められて買った。
「私も仕事終わ りは飲んじゃうんですよねえ」ドラッグストアのレジで初老の薬剤師は言った。
「もう少しですね」店の時計を見て、ひょっとしたら厳しかったような目を緩めた。旧知の友人のように白衣姿の彼は破顔し、深々とお辞儀した。
春の匂いはなつかしい、微かな汗の匂い。重い荷物を腕に抱えながら、工事のクレーンが文庫本サイズの青い光を路上に投げかけていた。踏むと揺れてどこかに消えた。
歌詞引用:心のラブ・ソング / ウイングス
