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旅の余白に──ブライアンへ

2025年6月23日

故郷とは、帰る家のない人にとってイメージである。


青唐辛子のピクルス、島らっきょう、海ぶどう、瑞泉。何もかもが違う味わいで圧倒された。変わっていなかった。その夜、人々は花に音に舞い、満員の大部屋の片隅で涙した。誰も彼もが、違う顔で笑っていた。もう胸が一杯で苦しくて、逃げるように外に出て闇に暮れ始める海を見ていた。


何もないことの目眩、素晴らしき油断、酔った声が鳴った。どこまでも続くさらさらな白い砂に横たわった。乾き切ったその夜、浜辺には誰もいなかった。奇跡のように一面に広がる日没は、向こう側の暮らしがみえるような、例えば、極楽だった。


この砂は持ち帰れない。土地の液体を舌に触らせた。人生が停止したら、急に胸が痛んだ。愛くるしいペットにしか見せない表情や、息子や娘にしか見せない表情がある。その特別な表情は隠しようもない。何気ない日常のビデオを止めたら、固定されている。そんな表情が向けられないからといって、たとえ嫉妬しても無駄である。幸せが横溢するような表情は、おそらく、生物的触れ合いの最上が油断であることを束の間に露出している。


God only knows what I'd be without you If you should ever leave me


やがてありえない数の星の瞬き、鳴り止むことのない波の音。そう、性的衝動というのは巷で言われるよりよほど複雑である。あの人に抱く消え入ることのないこの狂おしい感情は、全く何かが違っている。視線も指も唇も新しく怯えて、何か別の表情が走り、それを見て女は笑うだろう。


My love's like the warmth of the sun It won't ever die


翌日目覚め、訃報を知り、青く光る琉球グラスを白い砂浜に見つけた。店に戻り、そもそもグラスなど存在しないように微笑む、地元育ちの美しく灼けた、昨夜の女に返した。彼女はおれの、まだ白くひ弱な腕に触れた。肌に照りつける太陽を愛した。汗に滲んだ真っ白のTシャツを投げた。裸足の熱が黄金と紺碧とクリームへ駆けた。


歌詞引用:

God Only Knows The Warmth of the Sun

by The Beach Boys


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