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ハーフタイム──雨が始める夏休みに
Strike another match, go start anew And it's all over now, Baby Blue 聴いても、涙を流さなくなった。 だからここで、書いておかなければ、ならない。 多量の安定剤、3本目の赤ワイン、来る日も来る日も。7年後、...
感傷なく、教養なく、月は輝く
「あの人好きする感じは、犠牲の上に成り立っていた、という気がします」 取引先の消えた男のことを思い出し、仕事帰りのノースリーブの美容部員の女は言った。 「思いやりに溢れている人。理不尽すぎる」 女はそう続けて、濃いめの大きなハイボールを飲んだ。...
何を書くのか、誰に書くのか
古代美術のような現代テキスト。古代ローマで生活人が石に記したような、女には海老さえ食わしたらいい、みたいな。敗北ムードに青ざめながら、士気を保つアスリート。フットボールは人生である。 Someday, everything is gonna be smooth like a...
素麺と梅干しと卵をぶら下げて
コンビニのトイレをガチャガチャされた。入ったばかりで、二度も三度も。ゆっくり扉を開けて顔だけ出した。にこやかで満足そうな、血色の良いおじさんの顔を通り過ぎるまで見た。気分次第で、サウナの汗を流さずに水風呂に飛び込むタイプだ。金髪のショートカットの女がおれを見ていた。彼は若い...
決着を知る、オーロラの傘、青い石の指輪
傘を忘れた。青い日差しは夕方、唐突に豪雨へ。同僚が傘を貸してくれた。女はデスクの後ろのパーテーションに、いつも三本の傘をかけていた。一本はビニールに縫われたような白い花柄。別の一本は黄色と水色に明るく輝き、スペインの聖堂のステンドグラスを思わせた。女が貸してくれたのは、淡い...
昨日の理のムードに──モリッシーへ
夏の仕事終わりの夜には、一旦冷房を消して窓を開け、むっとするような海風の匂いと、素肌と汗の季節を愛して、大きなグラス一杯の氷に缶のレモンソーダと白ワインを半分ずつ注いで、さらにレモンをたっぷり絞れば、濃い黄色の、ほとんど満月の光が照らしている。タオルを取り、洗面台の鏡に映る...
栗鼠を飼う女は何万といる──トリュフォーへ
神に誓って、女を待ち伏せする機会は失われた。人生で一度しか許されていなからではない。詩の消失を不当に女のせいにしたからではない。男が中年だからだ。もう女の名も顔も思い出せない男は探せない。酔っ払った占い師が視えると囁くかもしれない、男の死後の世にも執拗な亡霊さえ、詩や肉体を...
夏支度、悲歌は耳に残り
自宅のアパートのエレベーターで「上」を押し、ふとモニターを見上げると、若い男女が両手を掴み合い、取っ組み合っていた。酔って帰れば、現れるのはこういう人々である。男は女を壁に追い詰め、執拗にキスしようとしていた。犯罪ではないらしかったから、ドアが開く直前に顔を伏せた。似合いの...
恋風、仕事終わりへ吹き抜け
わたしもす 、音が中断し、沈黙が走った。女の笑顔が消えた。俯く女に、唇を重ねた。これが最後のキスです。嫌ですか。出会った日に女は言った。宵前の海辺をユニクロの白いスポーツウェアが走った。自販機の前で水を買う足はがくがくだった。ジブリのヒロインらしき女の笑顔に、世界は緩んで泣...
旅の余白に──ブライアンへ
故郷とは、帰る家のない人にとってイメージである。 青唐辛子のピクルス、島らっきょう、海ぶどう、瑞泉。何もかもが違う味わいで圧倒された。変わっていなかった。その夜、人々は花に音に舞い、満員の大部屋の片隅で涙した。誰も彼もが、違う顔で笑っていた。もう胸が一杯で苦しくて、逃げるよ...
短い序章、あるいは終章
冷たい水が肌に落ちる感覚があった。空を見上げた。雨は降っていなかった。額に、腕に、背中に、頬に、唇に、冷たい水が落ちる感覚があった。時に肌は剥き出しだったり、時に衣類に隠れていたりした。どこからも水は落ちていなかった。鳥も空にはいなかった。頭上には何もなかった。指で確かめて...
善美は彼方──使者の追憶に
初恋同士の二人の後ろ姿に嫉妬する夢から覚めたら一瞬の疼きはどこかへ。嫉妬したんだ。起き上がる前に、女に送ったメッセージの送信を取り消した。レンタカーをキャンセルした。換気扇を回して煙草を三本吸った。そうして人生を中止し続けていれば、もう明日のように終わるだろう。冷えていた白...
お疲れ様、今なお、週末への期待に
三件目の飲み屋の入り口のガラス越しに、上下スウェットの五分刈りの男の子が中年の男の尻を叩いた。お姉ちゃんも駆け寄り、小学生のような二人が父親に抱きついた。カウンターの爺が椅子から転げ落ちた。レンブラントの下卑た自画像が好きだ。手を合わせ、お会計。レジで店員の女がBGMに流れ...
What Makes a Man Pray ーThe Beatles
…英語で他人事のようにしか書けない… Wanna quiet him down, don't you? I mean... Make him read this then. What is it? The guy was drinking himself to death....
素面のスタバで不味いコーヒーがノートを汚した
それでも仕事の原稿が済んで心は小躍りだ! ...酒の代わりに、なるべく音楽を飲む。煙草の代わりに、なるべく映画を吸う。サッカーはダイジェストにして、放りっぱなしの古典をなるべく読む。誰も愛せないなら、なるべく書く。野菜ときのこがたっぷりのスープを、なるべく作る。生活をするた...
生活を愛するのは、きみではなく、季節である
完璧な生活をしているなんて誰も言っていない。贈り物の高級みかんを腐らしている。足の爪が掛け布団に引っかかって糸が伸びた。刈り取った欠片をキッチンペーパーに丸め、玄関で口を開けている一杯のゴミ袋へよそ見してほうったら入っていた。片方の柄が曲がっていたのは、お気に入りではない方...
小心の告白──すべからく幼いポップソング へ/を 書くこと
飲まずに書けぬのはあの日の後遺症だろうがいずれ克服するだろうしそこまでの降りではないと全てを挟んだクリアファイルの簡易傘で頭を隠して今夜もタコの刺身と茄子焼きとボールペンを片手にビールは金色のような彼を笑んでほうっておいてくれるママがいるブロンズに染まる商店街の酒場に走った...
最後の恋は柔らかな鈴の声
ふわりとした焼酎の名を持った天使がステラマッカートニーはかわいい、とつぶやいた。最初に出かけた日の切りたてのボブカットの毛先が揺れ、別れる度、混み合う改札で求められて、その白い剥き出しの背中はやがて嘆く、新しい華奢な身体をくるんだ。果実の香りに一生苦しむことになった。あなた...
雨は永遠にやみ、屈託なき労働者の朝へ
毎日花を買って愛する人の元へ帰ることを夢見ていた。若い女性が多すぎる街というのもやがて苦痛である。カウンターの隣の女がトイレに立った。ふと彼女の連れのスーツの男から静かに憎悪されていた。悪感情も取り締りしまられるべきじゃないか。しかし警察や教師になるのはごめんだ。水炊き豆腐...
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